アナグラのshinです。(無意味な時間という名の前置きを飛ばすボタン)
芋けんぴ好きの人や生産者の方には申し訳ないのですが、芋けんぴに対する僕の興味は非常に薄かったです。 どれくらい興味が薄いかと言うと––
“芋けんぴ”とは、明治時代にサツマイモ農家の権比(けんぴ)さんという方がある年の豊作を祝ってご近所さんに芋料理を振る舞う宴を催すのですが、宴の当日に誰一人 権比さんの家には来なかったそうです。
その事がきっかけで権比さんは「ワシは皆から嫌われているんじゃろか?」と、疑心暗鬼になり心を閉ざしてしまいます。
その後は、SNSを通してご近所さんの動向を監視し匿名で誹謗中傷をする毎日。 気づけばネットにどっぷりとハマってしまったのです。
彼のハマりようは、それはもう常軌を逸したもので、不気味の谷をギリギリ突破したような妙齢女性型のからくりを自作し、それをキャメラの前に立たせて自分は裏で喋りに合わせてからくりを動かします。
声は芋の先端で声帯を圧迫しながら出す萌え系の裏声で、世相を辛辣に切っていく(的を射ない)動画で、それをユーチューブで配信するという当時としては斬新なコンテンツを始めたそうな。
そう、元祖ブイチューバ―の誕生です。
「見た目や声と辛口論評のギャップがいい!」「声がかわいい」「見た目がかわいい」「少し苦しそうに喋る感じがエ〇… エモい!」といったコメントと共に一部界隈の男性視聴者人気を獲得しチャンネル登録者数20万人を突破します。
しかしその頃にはネタ切れに悩まされていた権比さん。 様々な企業案件をステマする節操のない行為に走ってしまいます。
そのステマの中には、権比さんが収穫したサツマイモも含まれていました。 これが彼を地獄のずんどこに突き落とす事になるとは、この時思いもしなかったのです。
人を呪わば穴二つ……
権比さんからSNSでの誹謗中傷を受けていた一人に、権比さんと同じように心を閉ざしネットの沼にハマっていたご近所さんがいます。
この闇落ちしたご近所さんは、社会的モラルや正義、法律に反する事柄を見つけては“正しさ”を盾に多くの他人を巻き込んでネットリンチする事に快楽を感じ、またそれを求め続ける見境の無い人になっていたそうな。
そんな闇落ちしたご近所さんの目に止まったのが、権比さんのサツマイモステマ動画です。 動画の背景に見切れている窓の景色から「この村である事」「村でサツマイモを栽培しているのは権比さんしかいない事」などの情報を切っ掛けに、このブイチューバーが権比さんである事を突き止め『彼が視聴者をだましている』として暴露を始めます。
権比さんがからくり人形と撮影をしている様子が盗撮され、その映像が拡散するとまたたくまに炎上します。
権比さんの実際の姿は男性視聴者が想像する「可愛い女の子」ではなく、引きこもりがちで体重が増加しストレスで禿げ上がった頭に、無精ひげを蓄えたゴリゴリのおっさんが甲高い裏声ではしゃぐ姿だったのです。
そう、元祖ク〇ちゃんの誕生です。
この炎上を皮切りに、好意の大きさがそっくりそのまま反転して憎しみに代わった男性視聴者たちが結託し、ネットリンチの様相を呈していきます。
過去様々に行ったステマ行為は暴かれていき、その様子はまさに“芋ずる式”です。
芋農家だけに“芋ずる式”です。
そして苛烈を極めていく権比さんへの人格攻撃や殺害予告、自宅への突撃など––
結局、権比さんのチャンネルは閉鎖に追い込まれ、広告収入で雇ったバイトに栽培させていたサツマイモも悪評により一切売れず、大量の在庫を抱える事となりました。
しかし権比さんは性根が曲がった人間です。 一連の騒動から過去を顧みて反省するどころか、より深く大きな闇を抱え、社会を憎むようになります。
その憎しみのやり場は、大量にあるサツマイモでした。
どこにいるとも知れない誰かを呪いながら、包丁で何度も何度もサツマイモを切りつけると、先のとがった短冊状になっていました。
それを「油地獄だ」と言わんばかりに油でカラッと揚げ、糖蜜で固めて荒縄に無数に括り付け自宅の周りに張り巡らせました。
そうです。 これが有刺鉄線の原型です。
権比さんの自宅の異様な光景にドン引きした人々は、彼に近づかなくなり、その存在は一旦影を潜めます。
権比さんの炎上騒動からしばらく経った頃、村ではイノシシやタヌキなどが大量発生し畑を荒らす、獣害に悩まされていました。
その原因は、権比さんの家に巻き付けられている尖った芋をタヌキがくわえていた、という村民の目撃情報から「どうやら権比の所の尖った芋を食いに獣があつまっているらしい」という推測に至ります。
村民の一人が真相を確かめる為、権比さんの家に行くと、ちょうど権比さんが群がる獣を甲高い裏声で追い払いながら食べられてしまったぶんの尖った芋を荒縄に補充している所でした。
疑惑が確信に変わる一方、村民は「あれはそんなに美味いものなのか?」と疑問を抱きます。 そして権比さんが家の中に戻った後、こっそり1本抜き取って食べてみたのです。
村民は衝撃を受けます。 カリッとした食感に油のコクと糖蜜の甘さに驚くとともに、これは売れると確信し、村の新しい事業として販売する事にしたのです。
製法は単純なので、容易に再現する事ができました。
しかし、名も知らない小さな村の名も知らない菓子など、誰も買いません。
そこで、炎上したとはいえそれなりに知名度のある権比さんの名前を拝借し「芋けんぴ」という商品名で、騒動を茶化すような広告を打った所、大ヒット。
そう、元祖 芋けんぴの誕生です。
最初は例の騒動を知る一部のモノ好きが買い「権比はまずいが けんぴは美味い」という口コミからユーチューバーが面白おかしく紹介し始め、一連の騒動を知らない人にまで認知されるようになりました。
そして気づけば、女子寺子屋生の間で芋けんぴを英字新聞がプリントされた紙でお洒落に包んだだけの物と一緒に自撮りしてインスタにアップする行為や、カップルが長めの芋けんぴをお互い端から食べていくだけの死にたくなるような短い動画が大流行し、芋けんぴの名は全国に知れ渡っていきました。
権比さんの存在を遥か彼方に置き去りにしてしまうほどのスピードで「芋けんぴ」は認知されていったのです。
しばらくネットを嫌煙していた権比さんが芋けんぴの流行に気づくのは、村に『芋けんぴカンパニー』という会社が出来て間もなくの事でした。
権比さんは自分が作ったものなのだから使用料を払えと会社に直談判に行きます。
迎えたのは社長であり、害獣被害の際に権比さんの家を偵察した村人であり、かつて権比さんにSNSでの誹謗中傷から心に傷を負わされたご近所さん、その人でした。
今や社長として村の権力者となったかつてのご近所さんは「芋けんぴの製法について特許を取得済みである事」と「芋けんぴは商標登録がされている事」を告げます。
権比さんは自分が怒りのはけ口としてやっていた事の副産物が思いがけず金になっている事を知って、あわてて自分の取り分を貰いに来たくらいの浅はかな打算しか持ち合わせていませんでした。
権比さんにとって、会社を相手取って裁判を起こすなどといった行為は人知を超える事だったのです。
顔面蒼白になりながら権比さんは捨て台詞を残し走り去ります。
「チッッックショォォォ」と。
そう、元祖 小梅太y=自主規制=
その後、権比さんは村を出て行ったとの噂がながれ、姿を見かける者はいなくなったのです。
後顧の憂いが去った会社は、わずか数年で村のランドマークになるほどのりっぱな自社ビルを持つまでに成長します。
今は社長として会社を運営するかつてのご近所さんは、自分をSNSで誹謗中傷してきた相手が、権比さんだという事を例の炎上騒動のさなか起きた不特定多数による個人特定攻撃により知っていました。
金儲けにもなり復讐も成されたと、青空の下で社長は満足気に自社ビルを見上げながら今後の展開に思いを馳せます。
お取り寄せのネット販売の案、キッチンカーでの移動販売の案、Kenpayという名でのキャッシュレス決済サービスなどなど––
その時、社長の背中に鉄球をぶつけられた様な衝撃が走ります。 後ろを振り向くとそこには–
「権比… おまえか……」
頬はこけ、やせほそり、髪は皮脂で汚れ重く背中まで伸び、その伸び切った髪の隙間からのぞく目は権比さんその人でした。
その手には芋を1本そのまま成形した巨大サイズの「芋けんぴ」が握られていました。
社長の背中はみるみる赤く、血のように赤く腫れあがりその場に倒れ込みます。 全治3か月。 衝撃による椎間板ヘルニアです。
糖蜜でがちがちに固められ黒光りしているとはいえ、しょせんは「芋けんぴ」です。 殺傷能力は高くありませんでした。
倒れ込む社長の姿に驚き走り去る権比さん。 彼が今後歴史の表舞台に立つ事は無かったそうです。
またこの「芋けんぴ襲撃事件」で怖気づいた社長は会社を売却し、権比さんと同じように時代の闇へと消えて行ったのです。
そして残された「芋けんぴ」だけが今なお美味しいお菓子として愛され続けているのでした。
––という妄想をしたのですが、実際「芋けんぴ」にどういった歴史があるのかなどは一切調べないくらい僕の芋けんぴに対する興味は薄いみたいです。
僕が知っている芋けんぴに関する確かな情報は「芋けんぴ、髪に付いてたよ」というセリフで有名な少女漫画『無理矢理ウェディング』の一コマくらいです。
そんな僕が、たまたまセブンイレブンで見つけた『こだわりの芋けんぴ』を戯れに買ってみたのが切っ掛けで、今ではその美味しさにハマってしまっています。
そうです『こだわりの芋けんぴ』を紹介するだけの記事です。
セブンイレブンで買える『こだわりの芋けんぴ』
たしか160円くらいです。 ごめんなさいレシート捨てちゃいました。
普段のおやつ選びで「芋けんぴ」を買おうなんて微塵も思わないのですが、手に取った理由はパッケージに表示された「沖縄産さとうきび使用」の売り文句です。
沖縄の砂糖といったら黒糖です。 黒糖といったら普通の上白糖よりもコクのある甘味が特徴なので、黒糖のテイストをまとった芋けんぴなのかなと勝手に想像して食べてみたくなった訳です。
勝手にそう思っただけで、何処にも黒糖使用とはかかれていないのですが、パッケージの表面には「まろやかで上品な 今までにないコクのある 甘さが特徴です」と書かれているので素直になんか美味しそうだなと思ってしまいました。
原材料に、さつまいも、植物油、砂糖、としか書かれていない所も、余計なものは一切使っていない“こだわり”を感じられました。
食べた感想は、先ほどパッケージに「まろやかで上品な 今までにないコクのある 甘さが特徴です」と書かれている事を述べましたが、まったくもってその通りの味だなと感じました。
買う時にパッケージに書かれた味の説明をみて「ふーん、そんな感じの味なのか… じゃあ買おう」って感じだったので、説明通りの味に改めて“こだわり”を感じます。
商品名も『こだわりの芋けんぴ』なので、全てにおいて「その通りだな!」と納得させられる味でした。
この「上品でコクのある甘さ」はサツマイモ自体の甘味と糖蜜の甘味を両立したような優しい甘さで、揚げた事による油のコクも相まって次々と食べ進めてしまいます。
原材料に書かれていた、サツマイモ、植物油、砂糖の三種が掛け算になってそれぞれを引き立て合っている様な美味しさが、カリカリの食感と共に口に広がります。
芋けんぴってこんなに美味しかったのか! と驚いたので、過去に芋けんぴを食べた記憶を探ってみたのですが、これだ! と思った記憶が全て“干し芋”を食べた記憶で、恐らく“初芋けんぴ”の為、冷静なレビューじゃないかもしれません。
ブラックコーヒーと「こだわりの芋けんぴ」
ブラックコーヒーと合わせると美味い! と気づいてからは朝の目覚まし代わりに飲むコーヒーと「こだわりの芋けんぴ」を摘まみ朝食代わりにしたりしています。
素朴な和のお菓子がコーヒーと合うというのは何か意外な気がしましたが、この組み合わせはしばらく続きそうです。
もちろん日本茶も紅茶も合いますが、個人的にはコーヒーとの相性が抜群だと思っています。
「こだわりの芋けんぴ」をバニラアイスに刺して食べてみた
なんとなくですけど、バニラアイスと一緒に食べたらそこはかとなく美味しそうだな、と思ったので森永のバニラアイス「MOW」を買ってきました。
冷蔵庫から出して少し柔らかくなった所で、こねくり回します。
そこに『こだわりの芋けんぴ』を何本も何本もぶっ刺したら荒れた感じの「世紀末MOW」が完成です。
滑らかでクリーミーなバニラの味の後、芋けんぴの優しいコクのある甘さと芋の素朴な味がマッチして非常に美味しいです。
今回は、剣山みたいな状態で食べましたが、芋けんぴを小さくへし折って入れ、バニラアイスと一緒に一口ずつスプーンですくって食べる方が食べやすくて良いなと思いました。
おわりに
初めてセブンイレブンの「こだわりの芋けんぴ」を食べたのは2~3カ月前くらいだったと思います。
「なんだこれうめぇ!」となってから慌てて買いに行きましたが、それから2~3カ月の間お目に掛かれる事はありませんでした。
もっと食べたいと思っても、家の近くのセブンイレブン(3店舗)では品切れなのか商品入れ替えで置いていないのか分かりませんが、長いあいだ見かける事すらなく半ば諦めていました。
それがつい先日、棚に「こだわりの芋けんぴ」があるじゃないですか。 あまりの嬉しさに商品棚に駆け寄って、ひったくるようにしてカゴに投げ入れました。
棚を見ればあと2つ、あります。
入れ替わりの激しいコンビニ商品です。 次はいつ買えるのでしょうか? もしかしたら、今後二度と手に入らない可能性だってあります。 そう考えると全て買い占めたい衝動に駆られました。
しかし、ほかにもこの「こだわりの芋けんぴ」を必要としている人がいるかもしれない。 「パパがセブンの芋けんぴ買ってきてやるから、勇気を出して手術うけてみないか?」「嬉しい! 約束だよ! ボク勇気をだして手術うけるよ!」みたいな感じで……
でも心の弱い僕は他者への思いやりよりも自己の欲求を優先してしまいました。 気づけば残りの2つも棚からカゴへとかき入れてレジで精算を済ませたのです。
そして家に帰ってふと思いました。
僕みたいな奴が他にもいるから手に入りにくいのでは?
もう手に入らないかもしれないという疑心に駆られて買い占める。 そして他の人が手に入らなくなるも、ある日とつぜん見かけ、疑心に駆られ買い占める。
そんなループの中に僕はハマったのかもしれない。 そう思うとうすら寒くなってきました。
今、僕の目の前には、およそ一人で食べるには多すぎる量の芋けんぴがあります。 この記事は美味しいものを食べたいという欲望と自責の念とが混ざったクソみたいな煩悩で書かれております。
「こだわりの芋けんぴ」は確かに美味しいですが、差し迫って買い求めるようなものじゃないです。
いつもとは違ったテイストのおやつ食べたいなって時、見かけたなら手に取ってみてください。
テレワークなどの作業の合間に、素朴なスイーツもたまにはいい物ですよ。
ここまで記事にお付き合い頂き、ありがとうございました。
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