2022年 新年あけましておめでとうございます。 2021年は餃子を沢山食べました。

アナグラのshinです。

新年 あけまして おめでとうございます!

皆さんにとって2021年はどんな年だったのでしょうか?

2021年、僕にとっては餃子を沢山食べた年でした。

それは“フードコートの魔物事件”に端を発します。

フードコートの魔物事件とは─

ラーメン店に潜む魔物

その日は土曜日でした。

とあるショッピングモールのフードコートでの出来事です。

お昼時のフードコートは流行り病の影響もあり、座席数が大幅に減っていました。 人はまばらなのに空いている席を確保するのが苦労する状況だったのを憶えています。

そんな中とあるラーメン店でランチセットを注文しました。

ラーメンと餃子5個をセットにすることで、それぞれ単品注文するより割安になるお得なメニューです。

僕は店員さんに、メニュー表を指差しながら「このラーメンと餃子5個のランチセットをください」と言って財布からお金を用意しました。

店員さんも「こちらのセットですね。かしこまりました」といってレジを打ちお金を受け取り、注文は滞りなく終わったのです。

フードコートでおなじみの、あの“呼び出しの時にブルブルするヤツ”を受け取って席に着きました。(ちなみにAmazonで売ってます)

S SMAUTOP
呼び出しベル
急にブルブルしてビックリさせられる
例のブルブルするヤツです。

4人掛けの広いテーブルしか置かれていなかった為、そこに一人で座るのが肩身の狭い気持ちにさせられる中、ブルブルするやつがブルブルするのを待っていると急にブルブルするもんだから思わず「おおっ!」って毎回ビックリする。 というルーティンを経て注文したメニューを受け取りに行くと、トレーには小さな一皿が乗っているだけでした。

お皿には餃子が5個乗っています。 餃子5個を目の前に、注文時と同じ店員さんが「お待たせしました」と言うのですが、予想外の出来事に僕は困惑してしまいました。

僕からブルブルするやつを受け取る店員さんに対して極力冷静に「あの、ラーメンは…」と尋ねました。

「え! 餃子一皿のご注文ですよね?」と言う店員さんの雰囲気が完全に餃子を一皿だけ注文した人への対応だった為、僕の記憶は危うく餃子を一皿だけ注文した、という事に上書きされそうになりました。

モンスタークレーマーだと思われないだろうか? いちゃもんをつけて店員を困らせて日ごろの憂さを晴らすようなサイコパス野郎だと思われないだろうか? でもこの店員さんさっき「こちらのセットですね」って確認しながら注文受けていたし…

勝手な被害妄想と店員さんの雰囲気にのまれて自分で記憶を改ざんしてしまわないように、記憶の中の事実を確認しながら“僕は間違っていない”という意思だけを頼りに声をしぼり出しました。

「ラーメンと餃子5個のランチセットを注文したのですが…」

もしかしたら自分の方に非があるかもしれないという不安もあり、僕は相手の目を見る事ができず、餃子の焼き目を見る事しかできませんでした。

「申し訳ございません! すぐにお作りしますので、もうしばらくお待ちいただけますでしょうか?」

なんて言ってもらえると思ったのですが、現実は僕に牙を剥きます。

焦りと悔恨を込めて謝罪する店員の姿は、僕の妄想の中だけの都合の良い存在でしかなく、実際は「え? ランチセットは土日販売してませんけど?」という返しでした。

僕は思わず「え? ランチセットって土日はやってないんですか?」とバカみたいに言われた事をもう一度訊き返すしか言葉が出ませんでした。

この瞬間からもう目の前の店員さんが“人外の者”に見えてしまい恐怖で奥歯がガタガタと震えるような思いでした。

何故なら、セットを注文した時点で土日は提供していない事をアナウンスして断らなきゃいけない所を「こちらのセットですね!」と笑顔で受けて、提供は餃子一皿だけなのです。

そして極めつけは「お前は何おかしな事をぬかしているんだ?」と言いたげな表情です。

まさに人知を超える所業。 人は異形を前に恐怖するものです。 僕のSAN値はみるみる削られました。

この窮地に救いは無いように思えたのですが、レシートの存在が脳裏をよぎります。 そうですレシートにセット料金で打ち込まれていればこの魔物を倒す事ができるはずです。

聖なるお札よ!(レシート)我に力を! 魔物を消し飛ばせ!!

しかしレシートには餃子一皿のみ打ち込まれていました。

レシートを見なければよかったと後悔しました。 確認した事によって、目の前の魔物が強力な魔物である証明になっただけだからです。

もう恐怖でゲロでそう。

支払いの時に、商品の値段を聞き流し、おつりを確認もせずただ受け取って財布にしまった僕のミスはあります。

ただ、笑顔でラーメンと餃子セットの注文を受けて、慣れた手つきで餃子一皿だけレジに打ち込んでいる訳ですから初犯とは思えません。 ってか意味がわかりません。(注文の復唱もしていましたからね)

「ごめんなさい、じゃあこれでいいです」と悪くも無いのに店員さんへ謝罪をし、餃子一皿だけを手にテーブルへと戻ったのは、SAN値が底を突き正気ではなかったせいだと思います。

テーブルに戻ると、僕は餃子を見つめていました。

もしかしたらテレビのドッキリかもしれない。 だがこんな片田舎の小さなショッピングモールにわざわざ一般人の困り顔を撮りにくるでしょうか?

そんな事はありえません。

そうか、ユーチューバーの仕業だな! ユーチューバーなら、わきまえない輩が再生数ほしさに「テッテレー」なんて使い古されたSEを口ずさみながら、ドッキリと書かれた手作りフリップを掲げつつ現れるかも!

という現実逃避で餃子が冷めていくひととき。 ふと隣の席を見ると、更なる恐怖に襲われたのです。

先ほどの魔物店員が別のお客さんの注文を受けています。 そのお客さんは「ラーメンと餃子セット」を注文し、それをまたも笑顔で受ける魔物。

僕のような被害者が増える様を見せつけてくる魔物。

そんな恐怖に震えていると、先ほどのお客さんが僕の近くの席に付きました。 提供されるのがたった一皿の餃子とも知らずに–

しかし魔物のターゲットは変わってなどいなかった。 未だ僕のままだったのです。

隣のお客さんが注文したものを店のカウンターから取り戻ってくると、なんと「ラーメンと餃子セット」を食べ始めるじゃないですか! しかもカップルで!

なんでですか? 土日に「ラーメンと餃子セット」を注文する頭ちゃんぽん野郎には餃子一皿のはずでしょ?

僕は魔物の方を見ました。 絶対に目が合う事はありません。

恐らくこれは魔物が僕に対して更に恐怖と苦痛を与える為に仕掛けた拷問なのです。

仲睦まじく「ラーメンと餃子セット」をつついているカップルと、同じものを注文したはずなのに餃子5個しか食べられない僕。

4人掛けの広いテーブルの、大きなトレーに小さな餃子一皿。

もう孤独と恐怖で餃子の味なんて一切しやしない。

薄皮に包まれたスポンジを食べているようで、心の中では「味がしない… 味がしないや…」と泣きながら即座に完食して逃げるように帰りました。

家に帰ってから、お店のホームページを覗いて見ました。 土日にランチセットがやっているのかいないのか確認してみようと思ったのです。

ランチセットは土日も提供していると明記されていました。

見なければよかった。 心底後悔しました。

魔物にえぐられた心の傷口がさらにパックリ割れて、血しぶきを吹き上げるが如く大惨事。

自宅というセーフゾーンでエグいスリップダメージを受けました。

さすが魔物。 人心を完璧に掌握し、時間差で発動する呪い攻撃をしかけてくるとは…

ただ僕は間違っていない。 それだけを慰めにして、その後をなんとか生きる事ができたのです。

ふさがりかけた傷を再びえぐってくる魔物

それから一週間後─

心の傷口がふさがり掛けた頃、またあのフードコートの例の店に行く事がありました。

この日は後に用事が控えていた為、お昼時でしたが買い物を済ませて直ぐに帰宅しなくてはならなかったのですが、店の片隅にはテイクアウト用のメニューがある事を店先に設置された“のぼり”が宣伝していました。

都合が良いと思った僕は、メニュー表からテイクアウトのマークが付いたものを指差しながら「餃子5個半チャーハンテイクアウトで下さい」と店員さんに伝えました。

打てば響く鐘の如き元気な応対で「ありがとうございます! 〇〇〇円になりまーす!」といった店員さんの笑顔をみて震えあがりました。

奇しくもあの“魔物店員”だったのです。

│▷ たたかう│
│ にげる │

─── ───

│ たたかう│
│▷にげる │

─── ───

│▶たたかう
│ にげる │

フードコートには他にも飲食店があります。 しかし今更 注文をキャンセルしてもらうには、僕の心の強さが足りません。

初めから“にげる”選択など選べるはずもなかったのです。

これはボス戦なんだ。 逃げられない場面なんだ。 そう自分に言い聞かせながらお金を渡す僕の手が、引き換えにあの「ブルブルするヤツ」を受け取った瞬間から既にブルブルしていたのは、もしかしたら僕の手がブルブルしていたから、とかしていないからとか。(この時、前回同様に料金を確認してないし、おつりも確認しないミス)

とりあえず近場の席に着き、注文品を待つ間、僕はまたしても都合の良い妄想をしていました。

きっと前回の暴虐無人な振る舞いは、何かのミスや勘違いが重なった奇跡の様な出来事で、あんな心を引き裂かれるような惨事にはならないと考えていました。

今回の注文は、テイクアウトのメニューを1品づつ「餃子5個」と「半チャーハン」の計2品を頼み、鬼門となる“セット”を避けています。

万が一間違いがあったとしても、せいぜい半チャーハンが普通盛りのチャーハンになっているくらいの痛くもかゆくもない程度だと思ったのです。

そんな風に思いながら改めて魔店員を見てみれば、一所懸命に働く普通の店員に見えます。 少し一生懸命すぎて余裕がないようにも見えましたが、笑顔を絶やさない良い人に見えます。

しかし、喉元過ぎれば熱さを忘れるものですね。 この時、僕は先人が残したこの言葉を改めて深く心に刻む事になるとは思いもしませんでした。

暫くして––

例のブルブルするヤツがいきなりブルブルするので驚きます。 注文した品が出来上がった時のいつもの儀式です。

品物を取りに行くと、目の前にはトレーに広げられた 餃子、半チャーハン、スープ、小鉢、が美味しそうな湯気を上げていました。

ひぃ! と思わず声が出そうになりました。 提供の仕方が店内飲食用のそれだったからです。

その光景には『絶対に持ち帰らせないゾ!』という強い意志すら感じました。

テイクアウト用のパッケージングをされ、ビニール袋に入れられた状態ではありません。 当然、トレーに広げられた品物を「そうそう、これこれ。両手でしっかり持って、お家に向かってしゅっぱつしんこー!ってあほか!!」、なんてノリツッコミが出来る心の余裕はありません。

なぜなら、目の前の店員を改めて“魔物”だと再認識させられたからです。

熱いものは熱く、触れば火傷を負います。 魔物に近づけばその鋭利な爪で頸動脈をパックリ裂かれるのです。 なんでそれを忘れてしまっていたのかと自分を責めました。

もっと注文時に間違いを起こさせない様に厳重に頼むべきでした。

お待たせしましたと満面の笑みを浮かべる魔物に、僕は「あの… テイクアウトで頼んだんですが……」と、尻すぼみに声が小さくなりながも何とか伝える事ができました。

しかしそこは魔物。 強烈な一撃を振り抜いた体をひるがえし連撃の爪を見舞う「申し訳ございません。 こちらのセットはテイクアウトがございません」が炸裂。

それをまともに浴びた僕は「えぇ! テイクアウトないんですかぁ?」と、前回同様に言われた事を訊き返すだけのミスで意味なくターンエンドです。

恐ろしくてしかたありませんでした。 前回の事で多少は耐性を得ていたにもかかわらず、一瞬でSAN値はゼロです。 もう正気を保つ事ができませんでした。

更に僕には時間がありません。 このあと用事があり自宅に居なければいけない状況で、その時は迫っていたのです。

正気を失った状態で、最適な判断は無理でした。

「レシート頂ければ、今からお作りしますが如何でしょうか?」という魔物の言葉も、もう倒れた相手に対する“死体蹴り”にしか思えません。

「ここで食べます…」

それ以外、道は無いと思いました。

例えばトレーを受け取ったその体を一歩右に移動するだけで、食器の返却口があります。 そこに手つかずのままの餃子と半チャーハンを置いて直ぐに帰る事で、反逆の意を示す手段もあったかもしれません。

しかし食べ物を粗末するなと祖母からきつく云われて育った為、妄想だけに留め、光の速さで食べて帰るしかないと思ったのです。(テイクアウト用のパッケージだけ貰って自分で詰めて持って帰っていいか交渉すればいいのにね)

席に着くと、一週間ぶりに食べ物にありつけた無人島帰りの人並みのがっつき方で食べ始めます。

この店の調理担当は良い仕事をしています。 出来立てが微塵も冷めやらぬまま、素早く商品を提供している。

お陰で口の中はあちこち火傷を負い、喉元は熱く、胸を焼かれました。

ふさがりかけた心の傷は、魔物に再びエグられました。

これじゃあ傷が乾燥しないよ。 じゅくじゅくしたままで全然なおりゃしないよ。 そう思いながら急いで食べる餃子は、やはり味が全くしません。

スポンジです。

もちろんチャーハンも味がしません。 パラパラでフカフカのチャーハンの味がしないと言う事は、それはアスファルトで擦りおろした発砲スチロールと同じという事です。

僕は熱々のスポンジと発砲スチロールで口と胸を焼かれながらも、ただただ速さだけを重視しながら食べ進めたのです。

速く。 もっと速く! 限界を越えて速く! 光に… なれ––

こうして僕は一筋の光となりました。 逃げる様に光速で食べて帰ったという事です。

帰宅後、魔物が“こちらのセットは–”と発言していた事と、スポンジが5個ではなく、7個あった事が気になったのでお店のHPを恐る恐る覗いて見る事にしました。

そこにはどんなおぞましい真実が待ち受けているのか、考えただけでも恐怖で自律神経がガバガバになりゲロが出そうです。

お店のHPを確認する事で、店内メニューに「餃子7個と半チャーハンのセット」がある事と、そのセットは確かに店内のみの提供でテイクアウトは無い事が判明しました。

僕が相手にしていたのは人外の者です。 なぜセットメニューを避ければ普通に注文が通ると考えてしまったのでしょう。

人知を超えた者には常識など通用しないのです。 単品注文を勝手にセットにまとめられる可能性だって十分にあったのです。

この後、僕はどうやって用事をこなしたのか、全く記憶がありません。

その日の夜、落ち着いた僕は体験した出来事を思い返していました。

恐怖に震えてまともな判断が出来なかった僕ですが、自室の安全な空間となると気が大きくなったのでしょう。

やられっぱなしでは悔しい! あの魔物に勝ちたい! 急にそう思う様になったのです。

これは戦いなんだ。 あの魔物を倒す為には、正しく注文を通さなければならない。

一部の隙も、抜け道もなく、注文を正しく通させ、奴自らの手で正しい商品を提供させた時、魔物は浄化され、霞となって消えさる事だろう。

かくして後の世で、世を忍びつつ裏では魔店員を狩る、対魔店員忍と自負する事となる「対魔店員忍 shin」が誕生したのである。

「この世(店)の魔店員が霞となって消え去るまで、僕はこの店に通うのを止めない!!」

皆さんは、「死霊のはらわた」というB級ホラー映画をご存じでしょうか? 死霊に友人や恋人を殺され恐怖の中、逃げ惑う事しかできなかった主人公が、後半ではチェーンソーとショットガンで死霊を返り討ちにしていくというトンデモない映画です。

荒唐無稽かもしれませんが、僕でも魔物、いや魔店員に打ち勝つ事はできると思います。

お笑い芸人のティモンディ高岸さんに事情を話したとしたら、きっとこう云ってくれるはずです。

「殺(や)れば 出来る!」

それからの僕は、たとえ餃子やラーメンが食べたくなくても、お近くにお寄りの際は努めてお店をご利用させて頂きました。

そのお店の周辺には、美味しいカレー屋や、回転すし、ファミレス、牛丼チェーン、そのたもろもろ揃っています。

それら全てを、あの魔物を討伐する為に、一切目もくれずに通ったのです。

いっぱい、餃子とラーメンとチャーハンをたべました。

それも魔物討伐の闘志が強かったからです。

しかし僕の闘志のことごとくは、お店の売り上げに変換されていきました。

そしてしばらく通い続け、闘志が以前の熱を保てなくなった頃、悟ったのです。

こりゃあ他の対魔店員忍に先を越されちまったみてぇだな、てね。

こうして僕の戦いは、少しだけ店の売り上げに貢献しただけで幕を閉じたのです。

任を解かれた僕は、元気に好きな物を食べています。

しかし、この世(地区)に魔店員が現れた時、ウザいほど細かい確認をする客が現れるはずです。

そう、それが「対魔店員忍 shin」

みたいな出来事が「フードコートの魔物事件」で、2021年の春くらいに始まり、秋ぐらいまで魔店員と相まみえるべく定期的に通っていました。

シフトが合わないのかなー、会えないなーと思いながら諦めがつくまで通い続けてしまい、お店に行けば必ず餃子は注文していたので、「餃子の年」となってしまいました。

おわりに

あのおっちょこちょい子さんは何処に行ってしまったのでしょうか?

別に接客に対して怒りなどの感情はなく、逆にこちらが不謹慎だと思うくらいに、単純に面白がって通っていました。

店員さんには上手くいかなかった事情や状況があったと思いますが、どうすれば注文が正しく通るのかとか、複雑な注文にしたら何が出てくるのかとか、そういったスケベ心があったんです。

この世に悪の栄えた試し無しです。 僕の悪だくみは叶いませんでした。

新年のあいさつとして、こんなどうでもいい話に付き合わせるのもどうかと思いましたが、この手の話を他人から聞くのが結構すきなので、同志がいるなら暇つぶしくらいにならないかなと思い書き綴った次第です。

皆様の新年が、幸運にめぐまれ、美味しいものも沢山食べられる事を願って、新年のあいさつと代えさせて頂きます。

今の所、更新がゆっくりになっていますが、今年もたまに覗きに来てくれたら嬉しいです。 今年もアナグラ.blogを宜しくお願い致します。

ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。