アナグラのshinです。(前置きを飛ばす)
カメラ業界の衰退がまことしやかに囁かれるなか、カメラ好きの人はマイノリティな存在なのでしょうか?
一眼カメラをかまえて、雑草やら木の枝振りなんかを撮っていると「何かいるんですか?」と声を掛けられます。 それも頻繁に……
「しし、しゃ、しゃっ写真が趣味で、画にならないかなって撮ってるだけですぅ↓(苦笑)」
なんて僕が言うもんだから相手も苦笑いで無言のまま後ずさって行きます。
不審ですよね。 僕も不審だろうなと思いながら、それでも大好きな趣味なので写欲を抑えられずに石ころを撮ったりしています。 そしてまた「何かいるの?」と尋ねられて気まずくなる、その繰り返しです。
普通に考えれば、カメラを向けた先には何かが無ければおかしいと思うのが人情です。 そこには綺麗な花だったり鳥だったり、ツチノコやビッグフットの様な珍しい生物がいないと“不審”に見えるのだと思います。
空を撮ってても、不審者チェックなのか声掛けられますから、入道雲如きでカメラ向けてたらおかしな人認定ですよ。
空にカメラを向けるなら、映画の「宇宙戦争」に出てくるトライポットみたいのが攻めてきて、その長い脚で町のシンボルである橋をぶち抜いている。 そのトライポット越しに空へカメラを向けるくらいの事じゃないとダメなんです。 じゃないと不審ですから。
夕日を撮りたい! そう思ったら、宇宙からコロニーが落ちてきて地表に激突する瞬間を副題に主題の夕日へカメラを向けないと不審です。
つい先日も、模様がおもしろかったので“ただの壁”を撮っていたのですが、横眼に男性が来るのが見えたので、また何かいるのか訊かれるのが面倒に思い移動しました。 ふと気になって振り返り先ほどの壁の前を見ると、男性はじっくり壁を眺め続けていました。
更にその向こうから男性が歩いてきて、壁を見る男性の前で立ち止まり、何やら会話をした後に二人で“ただの壁”を眺めていました。 罠にかかった獲物を見る気分と居たたまれない気持ちが混ざって変な高揚感がありましたが、すぐ立ち去りました。
「この人、不審者です!」と言いたくなる気持ちは、男性二人の姿を傍目にみれば痛いほど分かりましたが、その一方で世間の撮影行為に対する認識に多様性がない様にも感じられて泣きそうになりました。
今の時代、みんな手元に高性能なカメラ機能が付いたスマホを持っているのに……
お洒落なカフェの美味しそうなランチ、じゃなくてその店のタイルの溝、とかを撮っててもいいじゃないですか……
そりゃあカメラ業界も衰退するはずだ!
この記事では写真という趣味を拗らせて、不審者扱いされる事を覚悟してまでもコンデジから一回り大きいカメラ、富士フイルムのミラーレス一眼『X-T30』を『色味』と『フイルムシミュレーション』目当てで使い始めたのですが“買い換えて今までと変わった事”を主軸にレビューしています。
富士フイルムの『フイルムシミュレーション』が気になっている方に読んで頂けたら嬉しいです。
このカメラを買って、みんなで“地面”を撮ろう!(買わなくていいです。 自分にあったカメラを見つけて下さい)
きっと楽しいぞ!
色味を重視してカメラを買ったら幸せになれました!
今まで、キヤノンの「EOS 5D」と「PowerShot G7 X Mark II」ニコンの「D5300」ソニーの「RX-100M4」を使ってきましたが富士フイルムの『X-T30』を購入する決め手になった一番の理由は「色味(仕上がり)」です。(あと値段です。 発売から1年以上経っているからか、安くなっています)
デジタルカメラなら、カメラ側の設定やライトルームなどのレタッチソフトで自分の好きな色味に追い込む事は出来るんじゃないかな? とは思います。
ただ、各カメラメーカーで基本(デフォルト)とする色味が異なり、自分が表現したい色に近づけるまでの難易度や作業数が違うと感じていました。
好みの色(仕上がり)に近い色で撮れるカメラだと、カメラ側の設定もラクだし、後々レタッチソフトで手を加えるにしても作業量が少なく済むので、撮影に集中する分、撮影時が一番楽しく感じるようになりました。
撮影時が楽しいと、撮影後のレタッチもより楽しく感じます。
自分好みの色(仕上がり)が出しやすいカメラというのは、自分の感性とカメラの相性が良いと言い換えてもいいと思うのですが“カメラと相性が良い”という事は「良い写真が撮れた」と感じる事が多くなるので、撮っていて気持ちが良いと思います。
写真を撮った後のレタッチ作業も、スタートが「良い写真」ですから、良い食材で料理するのと似た楽しさがあります。
そんな風に自分の感性と相性がいいと感じたカメラがたまたま富士フイルムのカメラだった、というのが購入した理由です。
フイルムシミュレーションとは
先ほどの色の話と被りますが、他社のカメラには“ピクチャースタイル”とか“クリエイティブスタイル”とか“ピクチャーコントロール”といった写真の仕上がりを数種類の中から選択できる機能があり、富士フイルムのカメラでは『フイルムシミュレーション』という名称で実装されています。
他社のカメラでは撮影した時の画の仕上がり別に「スタンダード」「ビビット」「風景」「モノクロ」「ポートレート」の様な名称が付けられています。
一方、富士フイルムのフイルムシミュレーションでは『プロビア』『ベルビア』『アスティア』『クラシッククローム』『アクロス』『エテルナ』『プロネガHi』『プロネガStd』『モノクロ』『セピア』といった独特な名称が付けられています。
他社のカメラは「スタンダード」「風景」の様に、画の仕上がりが名称から分かりやすく、特定の利用シーンを想定しているような名称などが付けられていますが、富士フイルムは自社で販売していたフイルムの名称で『プロビア』『ベルビア』『アクロス』がそれにあたり、それぞれのフイルムの写りをシミュレートした画になっています。
他の『アスティア』『クラシッククローム』『エテルナ』『プロネガHi』『プロネガStd』も、他社には無い富士フイルム独自の仕上がりを追究したフイルムシミュレーション固有のものとなっています。
jpeg撮りが好きになるフイルムシミュレーション
『プロビア』は見たままの色味に近く自然な画に仕上げてくれて、他社でいう所の「スタンダード」の様な写りなのですが、それ以外のフイルムシミュレーションは突き詰めた様な作り込みを感じる画が撮れるように感じています。(プロビアも富士のスタンダードとして作り込まれていると思います)
例えば他社の「ビビット」は彩度とコントラストが高く鮮やかな画になるのですが、この「ビビット」に相当するフイルムシミュレーション『ベルビア』だと、類を見ない鮮やかさで驚かされます。(ベルビアで植物を撮ると、彩度が高くなるだけでなく、瑞々しさまで感じました)
分かりやすく違いを説明すると、辛口と銘打ったカレーですが、辛いカレーが苦手な人でも割と食べれるけど辛いカレー好きな人は物足りないのが他社の「ビビット」で、富士フイルム版のビビット『ベルビア』は辛い物好きが納得するくらい本当に辛いカレーを出してきた、みたいな違いです。(個人的な感想です。 それくらい独特という事です)
X-T30を買う前から分かってた事ですが、ベルビアに関して言えば初めて実際に赤い花や緑の丘を撮って見た時は少しやりすぎなのでは? と感じるくらいぎっとりべっとりした印象を受けました。 それが暫く使っていくうちに、今まで使ってきたカメラのビビットとは一線を画す鮮やかさだと感じ、撮っていて楽しいと思うようになりました。
これだけ鮮やかで瑞々しく写るなら、猿の尻でも官能的になりそうだなと思ったほどです。
また『ベルビア』に限らず他のフイルムシミュレーションも独特で、突き詰めた様な仕上がりの画が撮れるのですが、自力で(RAWで撮ってライトルームでレタッチして)フイルムシミュレーションの様な画に仕上げにしようと思うと、かなり面倒くさいです。
それくらい完成度の高い写真が撮れるので、フイルムシミュレーションを選び、カメラの設定で微調整して作り込んでjpeg撮って出しするのが楽しく感じます。
フイルムシミュレーション紹介
以下、それぞれの『フイルムシミュレーション』でISO400、ホワイトバランスオート、絞りF8に設定し、他はデフォルト設定のままjpeg撮って出しの画像になります。
見たままの色に仕上げてくれる富士フイルムのスタンダード『プロビア』です。
どことなく寂しげな雰囲気になる写りに惚れてます。
鮮やか且つ瑞々しい仕上がりの『ベルビア』です。
ビビットな色味が好きじゃなくて、他社のカメラでは絶対に使ってこなかったモードですが、やりすぎも突き抜けると味わい深い。 ラーメンで例えると次郎や なりたけのギタギタみたいな中毒性があってクセになります。
ナチュラルでメリハリがある仕上がりの『アスティア』です。(※ごめんなさい。 アスティアだけピントがトマトじゃなくて後ろの缶になってました。)
ポートレート向きとの事ですが、人物撮影じゃなくても汎用性が高く使いやすいと感じています。
ベルビアとは真逆に彩度が低い『クラシッククローム』です。
個人的にこれの為に「X-T30」を買ったと言ってもいいくらいお気に入りのフイルムシミュレーションです。
色と質感と輪郭がバランスよく協調しあっているような仕上がりが大好きです。 あと何処となくアメリカっぽい。
アスティアとクラシッククロームの中間みたいな『プロネガHi』です。
クラシッククロームで撮っていて、彩度を少し上げたい時にカラーを調整するより『プロネガHi』にしたほうが手っ取り早い時があります。
個人的に使い勝手が良く分からない『プロネガStd』です。
日中、太陽光がしっかり当たっていて暗明差が激しい時に使ったりしています。
シネマルックな仕上がりの『エテルナ』です。
彩度もコントラストも低く、何処となく優しい雰囲気に映ります。 動画向きのフイルムシミュレーションとの事ですが、淡く綺麗な雰囲気を一発でだせるので好きです。
世界的に有名な富士のモノクロフイルムをシミュレートした『アクロス』です。
フイルムシミュレーションの中で、クラシッククロームと、この『アクロス』が目当てでした。
光と影の表現に加えて、粒状感による質感の浮き上がり方が、普通のモノクロ写真とは一味ちがって写ります。 ただの葉っぱを撮った時に、葉の質量が増したような画の仕上がりを見た時は、目に映ったもの全部『アクロス』で撮りたい衝動に駆られました。
スタンダードな『モノクロ』です。
光と影の輪郭を素直に撮りたい時にはいいと思います。(アクロスばっかり使っててこっちのモノクロはほとんど使ってません)
『セピア』
まったく使ってない! 今までも使ってこなかったけど『セピア縛り』で撮影すれば新しい何かが開けるかな……
フイルムシミュレーションはjpeg撮って出し
フイルムを入れ替えるように豊富な種類の中から選べるところが、撮っていて楽しくなる『フイルムシミュレーション』の魅力だと思います。
こういった画の仕上がりの違いは、写真を撮った際、カメラ内のイメージセンサーが捉えた光のデータ(RAWデータ)を画像処理エンジンが処理(現像=カメラで設定した仕上がりにする)して、jpegデータとなって保存されます。
この画像処理エンジンが仕上げるjpegデータの画が気に入るかどうかで撮影時の楽しさが格段に違うと感じています。
以前つかっていたカメラでは「スタンダード」な仕上がりのモード1択で、画の仕上がりを調整したい場合はRAWデータで撮影して、現像はライトルームを使って自分で仕上げjpegデータにする流れがほとんどでした。
『X-T30』を使い始めてから、フイルムシミュレーションでカメラが現像してくれたjpegデータの仕上がりが気に入っている為、jpegでの撮影が増えている事に気づきました。
以前は、撮影してから仕上がりをライトルームで決める流れでしたが、今は撮影前にカメラで設定を追い込んで仕上がりを決めてから(予想しながら)撮る、といった流れになっています。
撮影の流れが変わる事で、最も変化を感じたのが「シャッターを切る瞬間が楽しくなった」事です。
今になって思えば、以前はただ記録する為だけにシャッターを切っていたなと感じます。
別にRAWデータの現像作業が嫌いな訳では無く、むしろ大好きなのでRAW撮影もしていますが、以前より楽しみが増えたような状態になっています。
まだ使いこなせてなくて、カメラが写真を撮らせてくれてるような状態で、自分の力で良い写真が撮れている感覚はないのですが、カメラを信じてjpeg撮って出しをするのが楽しいと思い知らせてくれた『X-T30』でした。
おわりに
今まで使ってきたカメラが決して良くなかった訳では無いのですが、色味を重視してカメラを選んだ事が無かったので、今回の経験を踏まえると高い授業料を払ってきたなと反省しています。
オートフォーカスのスピードが超速いだとか、超高感度だとか、バリアアングル液晶だとか、分かりやすい機能面だけみて「きっと良いカメラに違いない」という雑な選び方をしていたと思います。
そんな雑な選び方でカメラを買うのですが、写真撮って時間を掛けている所は「どうしたら思い描いた色や質感になるか」という所なのに、カメラに色を任せない、期待しない、そんな写真ライフをずっと送っていたらシャッターを切る行為が「楽しいレタッチ作業をする為の、ただの素材集め」に感じる様になっていました。
写真を撮るなら色を重視するのは当たり前の事だと思うのですが、難しい所でもあったので分かりやすい機能から判断してカメラを選び、色は買った後で何とでもなるだろうという考え方の末路だったのかなと思います。
自分の感性と相性がいいカメラを使う事で、撮影体験が向上するなら、もっと色にこだわって選んでおけばよかったなと『X-T30』を日々使い込めば使い込むほど感じています。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
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